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学校へのエアコン設置、なんでそんなに高いのか

毎年夏になると注目される

 

「学校にエアコンが無い」

 

という問題。

今年は猛暑で、特に取り上げられることが

多くなっています。

 

私は仕事で学校の工事に携わることが多いのですが、

ネットや新聞を見ていて気になったのが

 

「1教室にエアコン設置で何十万、何百万なんて高すぎる」

 

という意見が多いことです。

新聞にコメントを載せるような

いわゆる有識者の方もこのようなコメントを

書いています。

 

ですが、私はこの金額をパッと見ただけでは

そこまで高い金額とは思いません。

 

仕事で関わっている=お金をはじく側

の人間がこのような記事を書いても

説得力が全くないとは思いますが、

私なりに理解していることをお伝えし

この問題でモヤモヤしている方に

少しでも参考になれば嬉しいです。

 

なお、この記事は設置費用の高い安いを追求するものではありません。

学校にエアコンを設置するには

こんなことが必要なんだ、

ということを少しでも知っていただけたらと思います。

 

学校のエアコン、なぜ高いと思うのか

まずはここから整理します。

エアコンを設置するのに必要なお金、

と聞いて多くの人がイメージするのは

 

電気屋さんで工事費コミコミで設置する金額

 

ではないでしょうか。

その金額は、エアコンのグレード(製品価格)にもよりますが、

 

5~10万円

 

くらいが一般的な感覚かと思います。

今、学校のエアコン設置が高いという話になるのは

この金額と比較してイメージする方が

多いのではないでしょうか。

 

ですが、

学校の教室にエアコンを設置するときには

一般の住宅に設置する場合よりも

余計な出費が必要となるものが多いです。

そしてそれが大きな金額差となります。

 

ここからは大きく三点に絞って

一般家庭に設置する場合との違いを

具体的に書きたいと思います。

 

エアコンの電源がない

教室のような大きな空間に対応するエアコンには、

専用の電源が必要となります。

元々エアコンがない教室なので、

この電源を新しく設置する必要があります。

 

電源の供給方法は

エアコンの種類によって異なりますが、

各教室にエアコンを設置するとなると

教室から離れた場所にある「変電室」から

新たに電線を何十メートルと

引っ張ってくることになる場合が多いです。

そのルートによっては

高所で足場が必要になったり、

窓や天井を加工して配線を通す、

と言った複数の関連工事が発生します。

 

ご家庭のエアコンであれば、

近くに予め専用コンセントがある場合が多く、

この場合はコンセントを差すだけですので

両者の工事費用に大きな差が出てしまいます。

 

エアコン自体の価格が高い

教室の広さに対応した能力のエアコンとなふと、

いわゆる業務用エアコンを選定するのが一般的です。

1教室が定価ベースで50~100万円

と言ったところでしょうか。

もちろん定価ですので実際の価格はこれより下がりますが、

それでも家庭用の数倍、数十倍です。

 

「それなら家庭用を何個かつければ良いのでは?」

 

というご意見を時々いただきます。

もちろん機械自体のお金は

それで多少安くなるかもしれませんが、

設置費用の多くを占める工事費は

むしろ手間が増えてしまいますので

トータルでは同じか場合によっては

高くなってしまうこともあります。

 

故障時の修理のしやすさや、

フィルター清掃などのメンテナンスも考えると、

オススメできる選択ではありません。

 

工事期間(時間)に制約が多い

学校へのエアコン設置が話題になるときに、

単純に費用の問題ばかりが取り上げられがちですが、

実はこれが費用面だけでなく

実際に工事をする際の

一番大きな問題だと私は思っています。

 

1教室にエアコンを設置するのに、

通常一週間ほど必要です。

この点も数時間で終わる家の場合と

大きく違いますね。

 

各教室にエアコンを設置するとなると

数週間から教室数によっては

1ヶ月以上かかることも普通にあります。

 

その時に問題となるのが「工事期間」です。

 

エアコン設置は音の問題や子供達の安全確保のため、

授業を行っている時間帯は

工事を行うことが難しいのが一般的です。

 

そのため、放課後の時間帯や

土日祝日といった期間が作業時間の中心となり、

まとまった工事時間を確保するのが難しいです。

 

そして一日に作業できる時間が短くても、

職人さんの手配にはそれなりのお金がかかりますので、

工事期間が伸びることはそのまま工事費用の増大に繋がります。

 

そんな中で、工事期間を大きく確保できるのが「夏休み」です。

エアコンに限らず学校での大きな工事は

この夏休みを活用することが多いです。

 

ですが、補習授業やイベント、

地域の方々の校庭・体育館利用などで

夏休みと言っても校舎内外を問わず

多くの人の出入りがあります。

そして工事はこれらへの影響を

最小限に抑えることを前提に

計画することを求められることが多いです。

 

また今年の夏もそうですが

この期間は暑さで工事の作業員の能率も下がります。

 

こういったことから、

一年で最も学校の工事がし易い夏休みと言っても

十分な工事期間の確保は難しい状況であり、

また単純な費用面だけでは図れない問題とも言えます。

 

まとめ:学校へのエアコン設置問題を解決するために

今回の内容は、見方によっては

「工事費用が高い」という多くの方のご指摘を

批判する形に見えてしまうかもしれません。

 

冒頭でも述べましたが、

そのような意図は全くなく、

単純に費用面であまり語られていない内容について

クローズアップしたいという思いで

書かせていただきました。

 

学校へのエアコン設置を進めるには、

学校の先生や役所の方はもちろん、

そこに通う子供達や保護者の方々、

さらにはそれを見守る地域の方や

今回取り上げたような工事関係者も含め

みんなで前向きな議論をして

考えていくことが必要だと思います。

 

今回の内容が

学校のエアコン問題についてモヤモヤしている方に

少しでも参考になれば嬉しいです。